キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
『今、見せたのがワシが知っとるすべてや ちぃとばかししかあらへんかったが良かったか?』

「・・あ、あ。 なんか頭が追いつかなくて、その」

目を泳がせていると、月影が近付いてくる気配がした。

『大丈夫や、梓は梓!
今は頭の整理がつかへんのは当たり前やで?
誰でもいきなり突き付けられたもんは理解できない。
ゆーっくり時間かけて向き合うて行けばええ!!』

「・・今、ちょっとだけ月影さんを尊敬したよ」

『ちょっとってなんやねん!! ワシが男に優しくするなんて貴重なことなんやから、有り難がれや!!!』

手を上下にひらひらとさせながら笑う月影に、苦笑いしか返せない。

上手く、笑えない。

『・・さて。 ワシはそろそろお暇するでー』

「あ、ああ・・・」

頷くことしか出来ずにいると、月影が困ったような顔をした。

『なんや、その泣きそうな顔は! 今生の別れとちゃうんやからそんな顔すんなや』

「別に泣かねぇよ! ・・また、呼んでもいいか?」

時々、この家で一人ぼっちなので寂しくなることがある。

そんなことを玲や京華に言ったら毎日のように居座るだろうから彼らには絶対言わないが。

< 36 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop