キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
月影は自称神さまだから多分、思ってることは伝わってるだろう。

『ああ。 充分伝わっとるでー 自称はいらん!!』

いらないとこまで読むのは良くないと思うが。

梓が嫌そうな顔をしながらそう思うと、月影がニヤリと不敵に笑った。

また読まれたのだろうか・・・

『まぁ、気が向いたらまた出てきたるわ。 ワシは男は好かんから簡単にはいかんがな!』

「・・うまい酒供えても?」

『それはっ・・・! 考えたるわ』

神様はお酒に弱いらしいです。

新たな発見をした梓は、月影に供えるのに余った酒を渡して家に入っていった。

残された月影は酒瓶に口をつけながら桜を仰ぎ見た。

『咲・・・梓に何したんや』

アイツに記憶がないなんてありえへん!

月影は残り少ない酒を煽ると、ゆらりと消えた。









がやがやと人が行き交い賑わう通りには、野菜の新鮮具合を比べる者。
綺麗な布を片手にそれを値切ろうと交渉している者などがいた。

玲はそれを見渡しながら、槍を片手にゆっくり歩く。

なんて平和なんだろう。

ここの人達は鬼の存在を知らないかのような顔で無邪気に笑っている。

「おっ!玲、久しぶりじゃねぇか」

「あ、柊弥のおっさん! どーも」

不意に声をかけられたので、振り向くと大根を振りなが野菜売りの親父・柊弥<シュウヤ>が笑っていた。


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