キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
久遠(?)は梓に背を向けると、外へ出る扉へ向かって歩き出した。

「おい、どこ行く」

『梓、直接話そう 私あなたに会いたいの 場所はこの子に案内させるから』

振り返らずにそう言って、京華が出ていったまま開けっ放しだった引き戸をくぐりながら外へ行ってしまった。

……俺に拒否権はなさそう、だな

溜め息を一つつき、梓は重い腰を無理矢理上げた。









ポチャン、と石が落ちた場所を中心に湖に波紋が広がる。

しばらくして波紋は無くなって水面が穏やかになると、京華は抱えていた膝に顔を埋めた。

「はぁ・・・私の馬鹿」

梓が口下手なのは昔からなので分かっていたはずだったのに。

どうして他人なんて言ってしまったのだろう。

怒り任せに言ってしまった自分が嫌い。

梓に傷ついた、今にも泣きそうな顔をさせた自分が・・・大嫌い。

不意にガサッと後ろの草が動いた。

特に気にせず膝を抱えていると、肩に何かが乗った。


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