キミがいなかったらこんなに恋い願うこともなかったよ。
「お嬢さーん?こんなとこで何やってんの」

「うっわ 玲・・・」

顔を上げて確認すると、男…玲<レイ>がニコニコと笑っていた。

こういう時って普通は梓が追ってくるんじゃないの?

京華はそう思いながら玲を睨んだ。

「ちょ、何 声かけたくらいでその態度ってひどくない? 俺泣くよ?」

「・・・うるさい どうせ梓に言われて来たんでしょ」

苛々してるから言葉に棘が立ってしまう。

玲は困ったような顔をしながら、京華の隣に座った。

「・・・梓と喧嘩した?」

「知ってて来たんでしょ わざわざ」

「残念。 俺は鍛練の帰りです」

そう言いながら持っている長い棒を振って見せる。

「だから別に梓に言われて追ってきたわけではないよ」

「っ?!! なんで分かるの」

「顔。 京ちゃんってば表情にすぐ出るからね」

自分の顔を指差しながら言う玲に気持ち悪さを覚えつつ、京華は抱えていた膝を伸ばした。

「・・・私、梓にひどい事言っちゃった
仲間じゃないなら他人だって
一番言っちゃいけないことだったのに・・・!!」

肉親や親戚がいない梓にとって、他人という言葉は辛く重いものだろう。

それを軽々しく口にしてしまい、傷付けてしまったのだ。

反省しても反省しきれないくらいだ。

< 7 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop