愛しい人
あたしらは教室に戻り
さっきのことを由奈がバカバカしく話し出した。
由奈「さっきいたデブかなりウケた~」
真実「(笑)」
由奈「あ!カッター持ってきた
キツネ野郎も~」
真実「キツネ?」
由奈「あいつ目細すぎだし(笑)」
真実「あ(笑)だね」
由奈といたらどんなことでも
楽しくなっちゃう。
今日はもう先輩に呼び出されることは
無かった。
この日はまだ授業はなく
昼までで解散だった。
先生のばかデカイ声が教室に響く。
由奈はずっと後ろ向いて携帯をいじってる。
あたしはずっと考えてる。
"裕也"って人のことを。
あたしは教室を見回した。
"裕也"って人と制服が違う。
ここの学校じゃないの?
学年も学校も知らない。
なぜあそこにいたのかも知らない。
ただわかるのは名前が裕也ってだけ。
名字だって知らない。
まだなんにも知らない。
ただあたしは今
ものすごく彼のことを知りたいと思った。