愛しい人

あたしらは教室に戻り
さっきのことを由奈がバカバカしく話し出した。

由奈「さっきいたデブかなりウケた~」

真実「(笑)」

由奈「あ!カッター持ってきた
キツネ野郎も~」

真実「キツネ?」

由奈「あいつ目細すぎだし(笑)」

真実「あ(笑)だね」


由奈といたらどんなことでも
楽しくなっちゃう。



今日はもう先輩に呼び出されることは
無かった。


この日はまだ授業はなく
昼までで解散だった。

先生のばかデカイ声が教室に響く。

由奈はずっと後ろ向いて携帯をいじってる。
あたしはずっと考えてる。
"裕也"って人のことを。

あたしは教室を見回した。
"裕也"って人と制服が違う。
ここの学校じゃないの?

学年も学校も知らない。
なぜあそこにいたのかも知らない。
ただわかるのは名前が裕也ってだけ。

名字だって知らない。
まだなんにも知らない。

ただあたしは今
ものすごく彼のことを知りたいと思った。
< 11 / 35 >

この作品をシェア

pagetop