私の敵はチビ会長
『はー…本当に話聞いてないな志穂って』
『は、はぁ!?そんなことないよ』
『だっていま聞いてなかったし』
『そっそれは…』
『噛んだ。』
『うっさいぞおまえら!!仕事しろっ』
あたし達ふたりを交互に見て怒る男の子
その顔には怒りがあらわになっていた
『怒られたな』
『笑うからだよ』
『おまえが面白すぎなんだよ』
そう言ってまた笑いだす前田くん
あたしも可笑しくなってつい一緒になって笑ってしまう
さっきの色気プンプンの前田くんはもういなくて
いま目の前にいるのは楽しそうに少年みたいな笑顔で笑う前田くん
その笑顔からは光がでてるように綺麗
頭をうごかすたびにゆれる無造作にセットされた黒髪が笑顔にすごく似合う
…絵みたい
あたしはいつのまにか笑うのをやめ、その姿に見入っていた
いつもなら教科書かりるだけだったけど、ちゃんと話してみるといいもんだなぁ
『ね〜!!志穂!?お客さん』
未夜が慌てながらあたしの名前を呼び厨房に勢いよく入り込んでくる
あたしはあたりにも大声だったからビクッと体と顔をこわばってしまった
カチコチになった体でゆっくりと声のしたほうに振り返る
『…なにしてんの?』
『へ?…べ、別にっ?』
料理するのには近すぎる距離のあたし達に怪訝な顔をする未夜…
やば…さぼってたってバレたら怒られる!!
額に冷たい汗がつたってくるのが分かる
前田君もうっすらと顔色が悪い…。あたしと同じこと考えてるんだろうな
眉毛がピクピクしてる未夜は沙織の次に怖い…
お母さんみたいで口答えができないし、お父さんみたいに威圧感もあるんだ
『…志穂。龍而。遊ぶなっ!!!!』
『…す、すみません…。』
『ご、ごめん』