私の敵はチビ会長
『…藍川くん。言い訳になるかも知れないけど…聞いて?』
『…っ…いや、いい。』
亜姑が話し出そうとするのを遮って俺は言葉を進める
驚く亜姑はきっとあのことを話そうとしてるから…
そのまえに、ちゃんと言わないと…。
『え…?なんで?』
『…俺、亜姑の実家に行ってきた』
『…えっ!?わ、私の…家に?』
『そう。』
亜姑の表情が一気に青ざめていく
でも、俺はお構い無しに話続ける
『…で、お父さんに会ってきた。すっごく心配してたぞ?』
『…分かってる。』
『それで…亜姑は大丈夫ってことを伝えた。けど、お父さんに呼び止められて…話聞いた』
そう…。
あの時亜姑になにがあったのか
なんであんなことを言ったのか
俺はずっと不思議に思ってて、なんであの電話のときに聞かなかったのかずっと後悔してた
いなくなる前、あんなに楽しそうにしてた亜姑が、泣きそうな声で”別れる”なんて言うから…
おかしいとは思ってたんだ
でも…聞けなかった
あのとき、言われたことがショック過ぎて、聞いて余計に嫌われるのが、怖すぎて
だから…
一言で終わらせた
この方がいいと思ったから
でも違った。
俺は亜姑のことなにも知らないくせに…
亜姑を傷つけていた
『…亜姑、ごめんな。…辛い思いしてたのに…気づいてやれなくて』
俺が『ごめん』と口にした瞬間亜姑の小さな体がビクンと揺れ、口を手で被うように塞いだ
この反応は亜姑がよくやる癖だ
笑いそうになるのを堪えるためによくやってた
でも、いまは…
涙を堪えるためにやってる