私の敵はチビ会長




それが無性に悔しい。

亜姑を泣かせてるのが自分だと思うと胸が締め付けられた




俺がなかなか次の言葉を見つけられず、ただ、黙って俯いていると亜姑の体が不意に動く



…?


俺が不思議に思って首を傾けた瞬間、

亜この口元が少し緩んだ気がした




『…私、ね…まだ…藍川くんのことが…好き、なの。』

『……え』

『ごめんね…自分で言ったくせに、まだ引きずってるなんておかしいよね。…三毛の人とは別れたの。私が落ち込んでたから心配して、契約を破棄してくれた。家も、倒産しなずにすんで全部もとどおり…でも…藍川くんも新しい生活送ってるのにね…こんなこと……迷惑だね。』



俯きながら俺の顔を一度も見ることなく話続ける亜姑

声はかすかに震えていて、いまにも泣き出しそうだった



それを我慢するように唇をかみ締める亜姑はすごく、小さく見える




でも…俺はなにもしてやれない


気持ちに答えて慰めて、亜姑と一緒にいてあげれば一番いいんだと思う…




けど…

ごめん、亜姑




『…俺…亜姑のこと好きだったよ。なによりも大切だった。…亜姑の本当の気持ちが聞けて嬉しい』

『〜っ…過去形、だね。』

『…うん。ごめん…なんて言えばいいのか…俺にはわかんない』



わからない…。

つまり、気持ちに答えられないってこと



亜姑は小さく震えるとゆっくりと顔を上げた



俺も亜姑の顔を見つめる。でもその顔を見た瞬間驚いた


泣いてないって思ってたのに我慢してるんだと思ってた



けど、亜姑は泣いてた


泣きはらしたような赤くなった目

ほんのり赤い鼻先も震える口もすべてに胸が痛む




また…傷つけたって。
















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