Sleeping dream
「ユウだよ。小森ユウ。
 同小だったじゃん。」

彼の大きな瞳が細くなる。


“あっ!”と叫んでしまった。周りの男女が振り返る。

彼は人差し指を唇に当てている。

「愛ちゃんの声、でかいよ。
 やっと、思い出してくれた?」




確かに同じ小学校だった。
彼は男子からも女子からも人気があった。

明るくて、人懐っこくて、何でもできた。

でも、話したことなんて、ほとんどなかった。

ましてや、“愛ちゃん”なんて……

しかも、こんなとこで何やってんのよ。




彼は腕時計を見ると、ポケットからメモとペンを取り出し、何やら書いてる。


その姿はもう一人前の男だった。


「愛ちゃん、ごめんね。
 もっと、話したいのはやまやま なんだけど、約束があるんだよ ね。
 これ、オレの携帯の番号。近い うちにかけてよ。」

彼はメモを破り取り、私に渡した。


本当に書いてある。




“じゃあねー。”と、私に手を振り、ネオンの中に走って、消えてしまった。




夜なのに、ネオンが塗しすぎて、彼の黒色のダウンが逆に目立っていた。
< 25 / 144 >

この作品をシェア

pagetop