Sleeping dream
映画館までの間、彼はほとんど一人で話していた。

最近見た映画の話。

好きなアーティストの話。

好きな漫画の話。

高校の話。




いろんな話をしていた。

でも、私は話よりも彼の顔ばかり気になる。




チョコレート色の髪。
少しだけ睫毛の上に前髪がかかっている。
瞼が閉じられる度、微かに動く。

会った時、吸い込まれそうになった黒い瞳。
笑う度に大きな瞳が細くなる。

鼻筋も綺麗に通っている。

白くて、きめの細かい肌。

赤くて、ぷるっとした唇。




全部見とれちゃう。




ずっと、見ていたいとも少しだけ思ってしまった。



「愛ちゃん、聞いてる?」

彼の腕が私の腰を突いている。



「ごめんごめん。聞いてるから。」

私はごまかすように、髪を触る。



“ちゃんと、聞いててよ”と、言うと彼はまた楽しそうに話始めた。




ダメだ……完全にペース持ってかれてる。

しっかりしなきゃ。








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