Sleeping dream
――夢はいつか覚める。


楽しかった夢も目が覚めれば、跡形もなく消えてしまう。



そんな事、ずっと前から知っている。




でも、“そんな事”が今の私にとって一番怖い。

男に抱かれている時も同じ。

“愛してる”が私の耳元で聞こえなくなったら、暗くて、寂しい現実の世界に引き戻される。

だから、いつも男の腕の中で祈っている。


――お願い、
    まだ戻りたくないの。――



握りしめられていた携帯は五本の指から擦り抜け、小さな音を立てて、床に落ちた。

落ちた携帯にも気付かず、私は窓の外を見た。



優しい雪が降っているわけでも、煌めく星が夜空を照らしているわけでもない。

ただ暗闇にばらまかれた明かりたちが滲むように浮かび上がっているだけ。




――どうか、
    覚めないで……――










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