Sleeping dream
――ガラガラガラガラッ


ドアを開けた瞬間、一気に視線が集まる。

私はそんなことすら気付かった。


「おっ、香坂。
 珍しいな。
 お前が遅刻なんて。
 どうした?」

先生は持っていた教科書を教壇に置き、私に話し掛ける。


本当にウザったい。


心の中ではそう思いつつも、一応、いつものように優等生らしく振る舞う。


「遅れてすみません。
 少し体調が悪かったんで。
 ご心配おかけました。」

先生は心配そうな顔でこっちを見てくる。


「そうか。
 あんまり無理するなよ。」


私は小さく頷くと、席に着いた。

隣の席のユウトも“無理すんなよ”と、肩をポンッと軽く叩く。


こういうのは苦手だ。

人の優しさがどうしても偽善にしか思えない。

だから、私は腐った人間なのだろう。




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