Sleeping dream
ユウの顔に触れようとした。

でも、動きかけた手を元に戻した。


「親父、二年前に再婚したんだ。
 美央は再婚相手の連れ子。
 だから、オレらは赤の他人同士 が兄弟になったってわけ。
 びっくりした?」


私の口からは“そうなんだ”としか出なかった。

あえて、“本当のお母さんは?”とは聞かなかった。

私が詮索することで、彼の傷口を開いてしまう気がした。

それに話したくなったら、そのうち、話してくれるだろう。


「でも、美央は好きだよ。
 兄弟いなかったから、妹ができ たのって、スゲー嬉しかった。
 あっ、嫉妬した?」


私を突く彼の指が何だかくすぐったい。


「あんたに嫉妬なんかしないわよ。」


彼は“どうかなぁ?”と笑うと、窓の外を見た。



私ね、本当はあんたを抱きしめてあげたかった。

こんな事、初めてだったよ。

あんたが笑顔じゃないのは、きっと、誰よりも辛かったんだろうね。

でも、この時の私にはそんな勇気はなくて、ただあんたの背中を見つめることしかできなかった。

ごめんね。





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