Sleeping dream
「もしもし……」


「こんばんはぁー。
 愛ちゃん、元気でちゅかぁ?」


赤ちゃん言葉のこの男は毎晩、私の携帯に電話をかけてくる。

私はベッドに倒れ込み、ため息をついた。


「あんたさぁ、キモい。」


「せめて、キモカワいいとかにし ろよな。
 割と、男はデリケートなんだか ら。」


「アハハ。デリケートねぇ。」


毎晩のユウとの電話は私のいくつもの仮面を外してくれているようだった。


ただ楽しくて、素の自分でいられる気がした。


「そういや、ブレスレット着けて くれてる?」


「うん。着けてるよ。
 せっかくだからね。」


左手首のブレスレットを見た。


学校に行く時も、

合コンの時も、

抱かれていた時も、

私の左手首にはシルバーのブレスレットがずっと光っていた。


着けている理由は特になかった。

でも、見ないようにした。

見ていると、彼を思い出してしまうから。


恋人でもない男を考えることがなんだかすごく怖かった。





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