Sleeping dream
白い机の上にはガスコンロで火にかけられている真っ赤な鍋が湯気を立てて図々しく居座っている。


側にはこれまた白い皿の上に細かく切り刻まれた具材がグループごとに盛られている。


それらを囲むように私たちがいる。


鍋の中のチーズのコトコトという音が心地よい。


湯気が部屋を優しく包み込む。


隣に座っているレナが両手を合わせて、嬉しそうにその時を待っている。



たまにはこんなクリスマスもいいかな。


いつもはニューヨークから帰って来た父親と一緒に家族水入らずを過ごす。


ダイニングテーブルの上には溢れんばかりのご馳走や砂糖菓子でできたサンタクロースやトナカイが飾り付けてあるデコレーションケーキ。


赤いリボンでおめかしした両親からのクリスマスプレゼント。


まさに絵に描いたような幸せな家庭。




――でも、清潔すぎる。


息苦しくて、抜け出したくなる。


薄汚い私には不似合いだ。




だから、今日くらいは何もかも忘れて、楽しみたい。




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