【COLORS②】怪盗バレン─聖夜に贈るメッセージ─
クランベリーチーズケーキの悲劇
「ほれ、ケーキ買ってきたぞ」

俺は小さな白い箱を千夜に渡した。

今日はクリスマスイブ。
しかもよりによって『日曜日』

街はクリスマスムード一色。キラキラしたイルミネーション、キレイに飾り付けしたツリーにサンタの格好したケーキ屋の店員。おまけに至るところに『Merry X'mas』の文字が踊る。
しかし俺はそのムードにいまいちついていけてない、

気がする……



「わ──い!!ありがとう、お兄様vv」

「……ったく。だいたい人をパシリに使うなよなぁ」

「人聞き悪いこと言わないでよ。じゃんけんに弱いお兄ちゃんが悪い!」

確かに……それは一理ある。
最後にじゃんけんに勝ったのはいつだっけ?

マジで思い出せない。
いや、ここ最近は勝った記憶がない。

「お前、俺がじゃんけん弱いこと利用してるだろ」

「考えすぎよ。どれどれ、あ──クランベリーチーズケーキだぁ!!!」
彼女は箱の中身を確認する。

もう絶対、じゃんけんなんかするもんか!
たった今、俺はそう心に決めたんだ!

「あ、それは俺が食べようと思って買ってきたやつ。お前はこっちのいちごショートの方!!」

「じゃんけん、ポン」



か、身体が反射的にぃぃ!!!!!!

「やったね!私こっちのチーズケーキ!!」



じゃんけんしないって決めたばっかだったのに……負けてしまったぁぁ!!!しかもまたグーで。


こうして俺はクランベリーチーズケーキを食べる権利までも失うこととなった。
というか、二つとも同じケーキを買ってくればよかったと今更ながらに後悔した。
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