唇を塞いで



お母さんからの相槌がなくなった
それと、野菜を切る、

トントンって音も消えた



「ねーお母さん、聞いてる??ねーお母さんってばぁ。お母さぁん」

あたしがキッチンを覗くとお母さんは真っ白になって倒れてた



「お母さん…どうしたの…」


その時のあたしは不思議なほど
冷静だった


ちゃんと救急車を呼んで、
ちゃんと住所だって言えてた



お父さんと十和が駆けつけて
お母さんの手を握りながら泣いてるのを見て、やっと気付いた


―お母さんが死んじゃうかもしれない―





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