【企】携帯水没物語
大人が表面だけでその言葉を使ったって何も伝わってこない。
悔しかった。
本当に悔しかった。
―…大人はみんなこんなふうに私達を見ているのだろうか。
わたしはまだ興奮が覚めきらないなか、震える手で新聞を開いた。
探したのは里奈の記事。
『女子高生が飛び降り自殺』
里奈はキレていた。
大人のつくったくくりからキレていた。
里奈は世間の注目を独り占めにしていた。
高校生の中の一人じゃない、一人の高校生として。
里奈の質問が重く感じられた。
“わたしって、何?”
そういうこと……?
里奈。
感情がわからない。
わたしは何を感じているの?
失意なのか、絶望なのか、はたまた、狂喜なのか。
わたしは部屋に戻って本の最後のページの次、つまり裏表紙の内側を撫でた。
里奈はここまで読んだであろう。
ゆっくり指を這わせた。
何かが触れた。
指先にほんの少し、段差が感じられた。
何かが挟まっている。
裏表紙とそれに糊付けされた薄い紙の間に。
指で段差をなぞる。
浮かび上がったのは
―…名刺くらいの紙。
図書館の本なのでキズをつけるのには躊躇いがあったが、カッターを目立たないところに入れた。
ポトリ
出てきたのは、
やはり名刺。
……―山田紗希の