【企】携帯水没物語
画面の上に広がる波紋
制服は冬服の長袖に替わっていたからばれないだろうと思っていたのに、万里子は目敏くリスカの後を見つけた。
「東佳、これ、なにしてんの!?」
「切っちゃった。やっぱ目立つ?」
万里子はよっぽど驚いたのか、返事が返ってこなかったので続けた。
「足首にすればよかった。手首は目立つね」
「東佳……やっちゃだめだよ」
万里子は心配してくれているのだろう。
原因は里奈の自殺と思っているかもしれない。
わたしは万里子を見つめた。
万里子には彼氏がいる。
で、やることはやっているのだ。
正直、気持ち悪い。
そういうこと以前に男と付き合うってことも、気持ち悪い。
周りが平気でやってることが、わたしには、理解できない。
だから、ショックだった。
万里子が彼氏とそういうことをやっていたことを聞いたときも、里奈のことも。
わたしの高校はいわゆる進学校だ。
レベルもそこそこで風紀も乱れていない地域に 愛される学校。
そんな学校でこんなにも身近にそういうことがあっていることが信じられない。
周りから見れば考え方が古いのだろうけど、なんというかそういうことは結婚してからするものだと思っていたくらいだから。
始業のチャイムで万里子は席に戻っていった。
かわりに入ってきた数学教師に嫌悪感を覚える。
苦手だった。
数学も、この教師も。