【企】携帯水没物語
大声で叫びたい。
例えばこの場に立ち上がって机や椅子を蹴り倒してしまいたい。
あせってる。
椅子に何度も座り直す。
先生の声が耳を通り抜けて遠くに響く。
落ち着け、落ち着け、
落ち着かなくちゃいけない。
わかってる、
そんなこと、
とっくにわかってるっ
大人のつくったくくりがわたしをここに縛りつけているようで、周りを見ても誰も気にしていないのが不思議なくらいにわたしの身体は、みんなの身体はいろんな鎖で繋がれている。
わたしは『高校生』だ。
里奈や万里子の『友達』の仮面をかぶって、
愛想笑いが特技の、
いわゆる『普通』で、
『わたし』だから。
わたしを取り巻いている空気が、感情がたまらなくうっとうしい。
うざい。
苦しい。
“先生”、
“先生”っ!!
わたしの気持ち聞いてくれるんでしょ?
ケータイ、
あのケータイが欲しい、今すぐ。
聴いてよ…“先生”!
身体中から嫌な汗が噴き出す。
貧乏揺すりを止めることができない。
シャーペンの芯を机に押し付けてポキポキ折った。
体は呼吸していても心のどこか大事なところに酸素がまわってない。
はやく、息をしたい。
わたしは―…キレたい。