【企】携帯水没物語
家には誰もいなかった。
自分の部屋に鍵をかけた。
例のケータイをひらく。
To先生
わたしの気持ち聴いてくれるんでしょ!?
先生からの返事がこない。
To先生
先生っ!!
いないの!?
To先生
先生っ!
先生っっ!!!
To先生
寂しい、苦しいよ。
先生
To先生
わかんない、ワケわかんない……
わたしは泣いた。
ケータイ握りしめて、泣いていた。
寂しい、寂しい、孤独感、虚しさ、痛い……
ひとしきり泣いたあと、わたしはそのまま眠ってしまった。
どのくらい時間がたったのだろうか、わたしは自分のケータイが鳴る音で目を覚ました。
わたしがケータイを探しあてた一瞬前に電話は切れてしまった。
気持ちはだいぶ落ち着いたみたいだ。
久々に自分のケータイを握りしめて、里奈から託されたケータイと見比べる。
自分のケータイにはさほど愛着はわかないのに、“先生”ケータイは近くにないと落ち着かない。
依存気味かな……
感傷に浸りつつ自嘲していると再びわたしのケータイは鳴った。
【寺井万里子】
……めんどくさい。
サブディスプレイに表示された名前に一瞬切ろうかとも思ったが、電話をとった。
『東佳!!どうしちゃったの、カバン置いたまま行方不明になって大騒ぎだったよ?』
「……ごめんね」
『先生、自殺したんじゃないかってマジ必死だった』