【企】携帯水没物語
「なんでわたしが自殺しなきゃいけないの」
口では笑っていたけどよくよく考えれば別にアリなんだということに気づいて、たいした意味もない愛想笑いが漏れる。
『まぁ無事ならよかったわ、東佳のおかげで今日は授業どころじゃなかったし、けっこうみんな喜んでたよ』
万里子がこういう淡々とした性格で助かる。
「万里子……わたし学校行けないや」
『ずっと?』
間髪入れずに聞き返してきた万里子に今度は自然と笑みがこぼれる。
「わかんない、けど、今無理」
万里子はしばらく黙っていたけど、案外あっさりと告げた。
『いいんじゃない?大人に有給?とかあるんだし、生徒もたまにはさぁ、そういうことないとダメだって。まぁ後から単位とか大変だから進級頑張んないといけないけどねー、落ち着いたら来なよ、勉強はわたしが教えてあげるから心配しなくていーよ』
「ありがとう」
『いーえ、ちか無責任なこと言ってごめんねー、まぁ東佳がどうしたって、東佳が決めたことなら、わたしは味方だから』
そんなことを言われるとなんだかくすぐったい。
「ホントに、ありがと」
万里子はじゃあねと電話を切った。
心配させてしまって申し訳なくなった。
しばらくは学校にいけない。
心配させてしまって悪いけど、今の自分が会えば何を言うかわからない。
何をするかもわからない。
わたしは自分がわからない。
ケータイを確認すると、“先生”からの返事はきていなかった。