【企】携帯水没物語
そんなニュースや記事じゃ、ちっともリアルを感じない。
だって里奈は、
笑ってた。
お喋りした。
泣くし、怒るし、落ち込んだり、励ましてくれたりした。
里奈の手は温かくて、里奈の声は優しくて、里奈の線の細い身体も、真っ黒な瞳も、里奈が感じられた。
里奈の代名詞は女子高生なんかじゃない。
里奈は里奈でしかない。
名前は『土浦里奈』でも、同姓同名の別の人物なんじゃないかと思うくらい、他人事。
どれだけ周りが語っても、里奈はけして語ることはない。
だからわたしは里奈の本当の言葉を聴けないし、何もわからない。
結局、先生からの返事が返ってくることはなかった。
かまわない。
感覚が麻痺したのか、今は、危険なことをしているかもしれないという意識が薄くなっていた。
先生から返事が返ってこなくてもいい。
このケータイは確かに先生につながっていて、先生は全部聞いてくれるから。
もはや“御守り”、なんだから。