【企】携帯水没物語
土浦里奈はおとなしい子だった。
真面目ちゃん。
クラスでも目立たない、多分、真っ先に忘れられてしまうタイプの子だった。
わたしと里奈の付き合いは長かった。
保育園からずっと一緒。
家も近くてよく遊んでいた。
高校に入ってからも同じグループで昨日まで過ごしていたのだ。
里奈の歴史が止まった。
里奈と過ごした日々が少しずつ、遠くなっていくのをわたしはこれから感じるのだろう。
人生で家族以外に一番長く一緒にいた里奈が一番じゃなくなる時が来る。
わたしの人生の中で里奈と過ごした時間の割合がどんどん小さくなる。
たまらない。
胸にぽっかり穴があく感覚がはじめて理解できた。
誰も里奈が死んだ理由がわからない。
里奈が最後に立っていた屋上からは3つの遺書が見つかった。
1つは家族へ、
1つは学校へ、
そして―…最後の1つはわたしへ。
それもわたし宛のものだけ箱で。
箱の中身は手紙と携帯電話。
里奈が使っていたものじゃない。
彼女のケータイはわたしとお揃いの色ちがいだ。
だから、箱から出てきたのは見たことない携帯電話だった。
誰の?
すぐに疑問が浮かぶ。
わたしは手紙の封を切った。
なにかしらの手がかりがあるとすれば、後はこの手紙くらいしかなかったのだから。
手紙は里奈の丸っこい字で綴られていた。