【企】携帯水没物語

角を曲がった先の通りに校門がある。

おかしい―…と感じたのは、その角だった。


万里子の言っていたことは本当で、人溜まりができていた。

屋上を目指しているのだろうか。

でも、まだ学校の中には入っていないらしくて、校門のところで、先生達が必死に押し戻しているのが見えた。

校門はもうすぐそこだ。
わたしは息を詰める。

何をしようと明確な目的があってここに来たわけじゃない。

ただ、何かしなければと気持ちが焦って、身体がそれに答えようとした。


それだけ。


先生……

わたしは先生のケータイをポケットから出して握りしめる。

早く止めないと、先生達のバリケードが破られたら、もう彼等を止めるものがなくなってしまう。

だけど、わたしはなんで自殺しちゃいけないのかわからなくて、なんとか、いけないと感じているだけだ。

止める権利なんてない。

んだけど、良心が放っておけないの。


わたしは息を吸った。


「命捨てんな!!!」


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