【企】携帯水没物語
こんなにも大勢に見つめられたのは初めてな気がする。
彼等の無言の視線はわたしを貫いた。
無数の瞳が悲しみと怒りと寂しさが混じりあったような目でわたしを見つめていた。
わたしの瞳は揺れる。
見つめられているのに虚無感に包まれ、あまりの視線の重さに圧倒され、心はじりじりと後ずさっていく。
それでもわたしは踏み留まった。
一歩でも後ろへ下がれば、わたしは、わたしもきっとあの目に取り込まれてしまう。
本当に、ギリギリ。
わたしの心は隙間だらけのはずだから。
お互いの間に張り詰めた空気が流れる。
先生達も何も言わずにハラハラと事の成り行きを見つめているのが伝わってきた。
「命、捨てんな」
わたしは噛み締めるように、もう一度、繰り返した。
彼等の瞳は、また悲しそうにわたしを見つめる。
わたしに一番近い学ラン茶髪が答えた。
「あんたは俺たちの仲間だろ」