【企】携帯水没物語

「……トウカだ」


最初に口を開いたのは茶髪だった。

後は一気に伝染して大騒ぎになった。

どこで出回ったのか知らないが、わたしの名前はとっくに知られているらしい。

わたしはあっという間に取り囲まれた。


「里奈のケータイだ」


誰がわたしが握っていた先生のケータイを指差して言った。


「トウカさん、それください」


わたしはわけがわからず身を固めることしかできない。


「……無理」


だってこれがないとわたし、死んじゃう。

マジに、リアルで。

これがわたしを繋いで世界にくれてるんだから。

一人が動くのとほぼ同時に彼等は波になって押し寄せてきた。

奪われるっ!!!

わたし咄嗟にしゃがみこんでケータイを守ろうとした。

無数の手がわたしに伸びる。

わたしはグッと目をつぶって、強くケータイを握りしめた。

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