【企】携帯水没物語

わたしが連れ込まれたのは、普段滅多に使わない第三講義室でやっぱり誰もいなかった。

悠哉くんは気を利かせてか、さっさと教室に戻っていった。

わたしは未だショックが抜けきらず、呆然としていた。


「……よかった、東佳自殺してなかった」


万里子はわたしに抱きついて耳元で呟いた。


「無茶し過ぎだよ」


「来るなってメールしたじゃん」


わたしは椅子をすすめられた。


「万里子―……ありがとう」


「どーいたしまして」


一息ついて続けた。


「東佳は来るような気がしてたんだよね。悠と待っててよかったよ」


万里子は言うだけ言って、後は笑っていたけど、それがありがたかった。




なんとかわたしが落ち着きを取り戻した時、わたしのケータイは電話の着信を告げた。


【陽人さん】


< 37 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop