【企】携帯水没物語
わたしが連れ込まれたのは、普段滅多に使わない第三講義室でやっぱり誰もいなかった。
悠哉くんは気を利かせてか、さっさと教室に戻っていった。
わたしは未だショックが抜けきらず、呆然としていた。
「……よかった、東佳自殺してなかった」
万里子はわたしに抱きついて耳元で呟いた。
「無茶し過ぎだよ」
「来るなってメールしたじゃん」
わたしは椅子をすすめられた。
「万里子―……ありがとう」
「どーいたしまして」
一息ついて続けた。
「東佳は来るような気がしてたんだよね。悠と待っててよかったよ」
万里子は言うだけ言って、後は笑っていたけど、それがありがたかった。
なんとかわたしが落ち着きを取り戻した時、わたしのケータイは電話の着信を告げた。
【陽人さん】