【企】携帯水没物語

From先生
そうだよ
先生です
あなたは?


当たり前のように、返事は返ってきた。

迷ったのは一瞬、わたしは打ち返した。


To先生
リナ


勝手に里奈の名前を借りた。

悪いと思ったけどさすがに本名はまずい。

相手が犯罪者ということもあり得るのだから。

それに相手の反応も知りたかった。

里奈がこいつとメールしてたなら、なにかしらの反応があると思った。


From先生
リナ
はじめまして
よろしく


ダメか。

里奈が偽名を使っていたのかもしれない。


To先生
あんたは誰?


攻めなければ、答えは得られない。

だから、油断はしない。

こいつが里奈を殺した可能性だって、わたしは否定しない。


From先生
誰?難しいな。
ご想像におまかせします


ふざけてる。

わたしは里奈の手紙を読み返した。

何度読んでも、引っ掛かる事はない。

これが刑事ドラマなら、ここでなにか見つかるはずなのに、だ。

わたしは封筒を逆さまにした。

なにも出てこない。

が、
封筒の内側に貼り付けられている、あるものに気がついた。


「これ、図書館のカード……」


しかも名前は里奈のものじゃない。


『山田紗希』


もしかしたら……


To先生
先生『山田紗希』って知ってる?


里奈かもしれない。

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