【企】携帯水没物語
「東佳、気をつけてね」
万里子と悠哉くんに送り出され、わたしは学校を出た。
「マジ、ありがとう」
わたしがお礼を言うと万里子達は二人顔を見合わせて笑った。
「これ返しとく」
悠哉くんが差し出したのは―…先生のケータイだった。
「壊れてるけど、拾っといたから」
まともに水を被ったのだから仕方ないけど、ケータイの画面は真っ暗なままだった。
センセ……
いて欲しい。
一番いて欲しい時に、先生はいなくなってしまった。
「早く行きな」
万里子に背中を押されわたしは駆け出した。
万里子と悠哉くんがどうかいつまでも幸せでありますように
二人がいつまでも一緒にいられますように
見送ってくれる二人をうらやましいと思いつつ、そう思わずにはいられなかった。