【企】携帯水没物語
「里奈―…なんで…」


里奈はわたしの言葉を遮った。


「ごめんね東佳、時間ないんだ。
言いたいこと、言っちゃうね」

「…うん」


わたしはただ、ただ、呆然として頷くしかなかった。

わたしが落としたケータイから、光とともに里奈が帰ってきた。

だけど、それはとても儚くて、今にも崩れてしまいそうに見えた。

里奈は―…死んだのに。


「わたしね、

今、

魂なの。

東佳信じられない?」


信じられないよ

里奈が目の前にいるのが


「東佳、紗希を見つけてくれてありがとう。

わたし…紗希に負けちゃった」

「死ぬつもりなんてぜんぜんなかったよ。
でも、気づいたら死んじゃってた」


淡々と語る里奈の口元がわずかに歪んだのが見てとれた。


「里奈は………紗希だったの?」


里奈は首を横にふった。


「半分正解、かな。
紗希は……なんだったんだろうね
わたしにもよくわかんない
死んだらいなくなっちゃったみたい」

「東佳とメールするの楽しかったよ。
学校のこととか、友達のこととか、わたしは東佳の世界観をぜんぜん知らなかったから、びっくりした。


東佳に相談すればよかったって

後悔してる―…」


それで先生はあんな質問ばっかりしてたんだ

先生―…里奈だったんだね


「東佳のことが心配だったの。東佳まで死んじゃうって思った」


里奈の頬を涙がつたう。

「勝手なこと言ってるってわかってる。だけど、お願いします…………東佳、誰かに寄り添って歩いてあげて」

「独りぼっちのさみしい心に寄り添って歩いてあげてほしいの」


わたしは何も言えなくてただ、ぼろぼろ涙をこぼしていた。

何度も何度も頷いた。


「東佳…大好きよ
いっぱい迷惑かけてごめんね…………もう、大丈夫だからね」

「自分のやったことは、自分で片づけるよ」

「…………里奈っっ」


里奈はわたしを抱きしめた。

わたしは里奈にしがみついてひたすら泣いた。
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