【企】携帯水没物語
次の日には、わたしは図書館に来ていた。

右手に握られたメモには本のタイトルが記されている。

『生きること』

意味深過ぎてむしろ笑えてくる。

幸いすぐに見つかった。

山田紗希が借りた本。

パラパラと中をめくってみたが怪しいところはない。


To先生
山田紗希とどこで知り合ったの?

From先生
今日は何を教えてくれる?


ただでは教えないってことか。


To先生
なんか質問して。
わたし個人が特定できないことなら答える

From先生
じゃあ友達は好き?


なんなんだ。

昨日からこいつの質問の真意が見えない。


To先生
好き。
うざいときもあるけど、基本的に好き

From先生
うざいときってどんなとき?

To先生
わたしの質問に答えて

From先生
彼女からメールがきたから。
これでいい?


メールがきたから。

紗希はこのケータイを手に入れて、わたしと同じようにこいつにメールしたのか?


To先生
興味のない話をされたとき


From先生
例えば?


To先生
恋愛関係の相談。
紗希からいきなりメールがきたの?


From先生
それ、
詳しく教えてくれる?
そうだよ、
ケータイ拾ったってね


拾ったって、里奈と同じじゃん。

わたしは懸けてみた。


To先生
紗希とどんなメールしたのか教えてくれるなら詳しく話すよ

From先生
彼女のグチ

To先生
例えば?

From先生
学校のこととか友達のこと。満足?


わたしは見切りをつけた。

これ以上は引き出せないだろう。


To先生
まぁいいよ。
誰が好きとか、
目があったとか、
実際自分に関係ないし、いちいちそういうの報告されるのうざい。
勝手に頑張ってくださいって感じ。
相手するのめんどくさいし愛想笑いも疲れる。
わたしはその人に興味ないのに語られても困る。そういうこと。

From先生
わかるかも(笑)
そういうことをうざいって感じるのか。
ありがとう


先生は勝手にメールを完結させた。

今日はここまでと言いたいらしい。
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