【企】携帯水没物語
陽人さんと別れて、学校までも、あと、少し。
途中で万里子と行き会った。
万里子はしばらく何も言わないで黙ってわたしの隣を歩いていた。
それから、ふと立ち止まって、わたしを見つめてた。
「東佳、背伸びた?」
あまりにも突拍子のない質問に、咄嗟に答えられないわたしを見やって、万里子は続けた。
「うん、やっぱ大きくなった。何ていうか……シンプルになったよ、東佳は」
「何言ってんの」
でも、それもいいかもしれない。
わたしはきっとシンプルになった。
「万里子、寄り道、していい?」
わたしは万里子の返事を待たずに、あの日、わたしが水没しそこねた橋へ向かった。