海より深く 空より広く
雨
雨が好き。
湿り気を帯びた空気も、
地面に降り注ぐ雨の音も。
子供の頃、カラフルな傘をさして
長靴を履いて水溜まりに
よく飛び込んで遊んでいた。
泥だらけになっては怒られた。
翌日、晴れると
水が染み込んでしまった長靴が
バルコニーに逆さにされ干されていた。
大好きな犬のマークが入った長靴は
祖母が買ってくれたものだった。
優しい祖母は身体が弱くて、
私が小学校に上がった時には
もう会えなくなっていた。
時々、あの優しくて
温かい手を思い出す。
そして、同じく雨が好きだった事も。