ひとりでふたつ
朝からあまりはしゃがないでほしい。
おれぁ低血圧なんだよ、頭に響くから黙ってろ。
と、悪態つくのもなんだか億劫で、せめてもの意思表示に小さくため息をついた。
そんな俺をとがめるかのように、横から華奢な手がのびてくる。
細い指で俺の耳の横あたりをなでつけながら
「ほら、ねぐせ」
「さわんな変態。」
なつっこい笑みをうかべたまま、楽しそうに、俺の長い髪をいじるもんだから
…そうだ、この顔がいけない。
「(……くそ…また殴り損ねた…)」
女と見まごうほどのまつげの長さ。
長めの前髪からのぞく蒼碧の瞳。
ガキみたいに屈託なく、そして隔てなく向けられるこいつの笑顔に、俺はとにかく弱いのだ。