dessin
夢を見た。
大した夢じゃないんだけど。
今まさに寝転がっている屋上に俺は立っていて。空は死に、校舎は廃墟と化し、目の前には眠りにつくまえに見たオッドアイがキラキラと他の物とは違う輝きを放って。
夢の中なんだと思う。いや、実際の所よくわからない。
音が、死に花を咲かせられなかったかのように後悔し、揺らぎ踊る空間。静寂が俺の鼓膜を破ろうとピリピリと張り詰めて、空間には似つかわしくない生を廃除するかのように悲壮な叫び声を上げている。
いつも見ている景色の筈なのに違和感を感じるのは、その静寂の叫び声なのか、それとも俺以外の生である、あのオッドアイなのか。
否、両方だろう。
人とはその空間に似つかわしくないモノがあればそれを排除しようとするものだ。
真っ白なキャンパスに黒のインクが他動的に跳ねてしまえば、それは作品ではなく、排除すべき邪魔物になる。
その散らばったインクでさえ自認しているのならば、作品へと化すのだ。
それは空間でも同じ事。
むしろ、現実世界では邪魔者な俺を、こちらに引きずり込もうとしているのか。
この夢に紙背はあるのか。

オッドアイが此方を見つめている。
空間とは相容れないであろうその瞳は不思議なことに瞬きをしない。置物かとも思えるが、否。俺には生が見えるのだ。
双方の異色の瞳が哀歓を表してるとさえ思ってならない。
有為転変な世界が愛おしくなってきた。
岩のように地べたに張り付いて静止を続けながら思考を巡らすのは非常に難しい。
この場所は塋域に似ている。
生はないが、感情がひしめき合っている。
全ての終末を否、むしろ盈虚をまじまじと見せつけられたようで、俺はたまらず瞬きをした。
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