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「ふふーん!いただき!」
「せっかくのチャーシュー…!」
「あはは!ご愁傷様ー。」
「平沢、珍しいな。お前が学食なんて。今日は寝坊でもしたか?」
「まさか!ちゃんとお弁当持ってきたわよ。」
「じゃあ、俺のチャーシューパクんな!」
「あは!前金前金!ほら、なんか赤色の絵の具欲しがってたじゃない?昨日バイトの帰りに良い店見つけてさ!買ってきてあげたの。」


そう言って平沢は俺に紙袋を押し付けた。
見覚えのある紙袋だ。


「これ、駅の裏通りで買った?」
「へ?そうだけど…なに、見つけ済み?」
「まぁ、昨日…でも無くなりかけてたし、ありがたく頂いとくよ。」
「そーか…先に発見したと思ったのにー!」


平沢が悔しそうに眉を寄せてふざけて地団駄を踏んだ。
履いたサンダルがパタパタとフロアを叩けば、玉木がそれを見てフッと笑いを浮かべる。


「何よ?」
「いや…学校にサンダルって…」
「だってこれから海に行くんだもーん!」
「海?女だけで?」
「そうよ?悪い?」
「寂しいなぁ…?」
「出会いを求めに行くに決まってるでしょ!」
「学部に男いっぱい居るだろ?」
「美大生ってなんか変わってるんだもん。」
「って美大生が言うなよ。なぁ、東?」
「はは!つーか平沢、男捕まえるなら合コンっしょ!合コンしようぜ!」
「嫌よ。東の友達って変わり者ばっかだし!」


平沢が唇を尖らせて言えばまたもや玉木が吹き出した。しかも俺をチラッと見て、更に笑みを深くしていく。
俺は少し前からラーメンを啜っていて話には参加していないが、玉木のそれを見たと同時位にラーメンを飲み込めたので、行儀悪く箸を玉木に向けて差した。


「また笑ってるし。今度は何だ?」
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