躾と束縛と愛情【短篇】
「…………榎田、くん?」
「それだよ、あかり」
「え……?」
「あかりは、さ。いつまでオレのこと『榎田くん』って呼ぶの?」
優しく訊ねれば、予想外な質問だったのか泣きそうに歪んでいた表情を今度は驚きの表情に変えて。
「え、あ……だ、だって何か恥ずかしいよ」
「何で? 亮や三井先輩は名前で呼ぶのに、オレはダメ?」
───あかりの彼氏はオレだろ?
続けて言葉を継げば、面白いように頬を赤らめて。
「……だ、だからだもん!」
恥ずかしさを隠すように叫ぶ彼女に笑いが洩れる。
「何が?」
「う、意地悪」
彼女の言葉の意味をわかっていながら訊ねれば、上目使いに睨まれ不平をこぼされて。
「あかりだけだよ、オレが意地悪するのも、好きだっていうのも」
クスクス、と。笑いながら赤く染まった頬にくちづける。