秘密のMelo♪y①*日本編*
真裕復活!…か?
――楓サイド――
「まひろいっきまーす」
弓を天井に掲げて宣言する姿は、あくまで“武藤真緒”のものに見える。
俺の知っている“藤峰真裕”は…少なくともこんなに馬鹿っぽくは見えなかった。
いつも真剣な表情で…でも弾き始めると、すごく楽しそうな眼をしていたんだ。
そんなあいつを俺は……いつも…いつも。
追いかけていたんだ…。
「…あ。チューニングいるよこれぇー。この楽器使うの久しぶりだかんねー…はわ!」
「……」
「あっぶなー…。今危なかったよね、ね! 弓投げそうだったよーあはは」
「……」
それが……それがこんなに馬鹿だったとは…。
正直力が抜けた。
どんなやつなのだろうといつも思っていた。
本当に天才的な演奏をし、インタビューでも驕ることなく天真爛漫で。
…天真爛漫どころか天然ボケだったとはな…。
こいつ相手に憧れという言葉は正直使いたくなくなったが、それでもこいつの腕に俺は確かに憧れた。
その人格にも……どっぷりはまり込んだんだ。
「さっさとしな」
「は~い」
ひらひらひら、と弓を振り、また投げそうになって慌てる真裕。
ぶっちゃけて言うとやっぱりアホだ。