秘密のMelo♪y①*日本編*
――楓サイド――
「……」
「やっぱお前、今日…」
「ダメ!」
ダメと言っても……だいぶ顔色悪いぞ?
意気込んで立ち上がったはいいけれど…。
「は…」
「!」
案の定、フラッと足元がふらつき、前のめりに倒れそうになった。
「だから言ってんだろ? 今日は俺がなんとかしとくから、また…」
「嫌! これはあたし個人のことじゃない。藤峰家の歴史にかかわることなの。人に任せるわけいかない」
“あたし”…?
普段一人称は“まお”のこいつが…?
「例え嘘でも何でも、名を汚す者を出すわけにいかないの。あたし達が守らなきゃなんないのは、伝統でも名誉でもない」
俺をしっかりと見つめて言う真裕は、俺の知る『武藤真緒』ではなかった。
その代わり……。
「…あたし達が守るのは、先代が築いてきた歴史よ。そしてあたしは、お母さんと父様が造った“藤峰家の音楽”も守るの」
…その代わり、俺の知る『藤峰真裕』だった。