龍の花嫁~ちはやふる・冬絵巻~
「戦で…死に急ぐ者が…娶る必要はないし、誰かを愛しい想うなど…その者を
悲しませるだけだ…」
「……」
「私は…雪解けまでに此処を去るつもりだ…華殿」
彼を引き止めても私には時間はなかった。
「このまま…雪が解けなければ…源氏の討伐軍も来れない…」
私は彼の広い背中に抱きついた。彼の匂い、温もりを忘れないために…しっか
りとしがみつく。春には私の命も消し去る宿命(さだめ)。
現に彼の思いを残してはいけない。そう思えば思うほど…思いが募る。
「華殿…どうした?」
時が止まればいい…そうすれば永遠に…雪は解けることはない。
私たちは永遠にこうして過ごすことが出来る。