龍の花嫁~ちはやふる・冬絵巻~
別れは突然だった。
降り積もった雪が少しずつ解け始め…雪の下から春の息吹が芽生えていた。
暖かい陽射しが雪上に注がれる。
「お侍さん」
私はいつものように、彼に食事を運んだ。
納屋に彼の姿はなかった。
布団の上に和紙が置かれていた。
『朝露の わが思ほゆる 愛しき君よ 来世の縁』
(私は儚げな命ではあるが、私は心から君を愛しいと思っている。願わくば、
来世の縁で君と結ばれたい)