龍の花嫁~ちはやふる・冬絵巻~
「やはり…汝は…俺が憎いか?」
「人を殺めた彼は転生することは出来なかった。あなたが彼の魂を喰らうことで彼は
物の怪とならずに済んだ。あなたの慈愛に満ちた行いには感謝しております」
「では……なぜ?汝は俺を受け入れてはくれぬ?」
前世と同様に…龍神様は 性急で私の心に入り込み掻き乱す。
「……」
龍神様の花嫁として自分は相応しいのかどうか迷っていた。
「……龍神が人に恋をするなんて…戯けたことだな…」
自嘲的に智成さんは笑い…扇で顔を隠す。
「……」
そして和歌を詠みはじめた。私に宛てた恋文。
『朧(おぼろ)月 恋ひ恋ひと 思ゆれど 紅の 縁の逢瀬』
(おぼろげに月を眺めながら 君を恋しい恋しいと思うけど(一人の男の)血に
塗られた縁で出会った二人だ…結ばれるはずはないか…)