龍の花嫁~ちはやふる・冬絵巻~
「……気が向けば…見に来て下さい…。舞台としてなかなか評判いいですから」
そう言って智成さんは机にチケットを置いた。
さっきまで…あんなに命令口調だった彼の口調が他の人たちと同じように言葉を選び
私に語りかける。
智成さんの背中に漂う哀愁。彼は振り向こうとしなかった。
彼の態度に胸がギュッと締め付けられ…私は自分の胸元を握り締める。
先ほどの態度と変わって…私と彼の間に隔たりが出来た。
他の人たちと同じ…壁が立ちはだかる。
「……」
智成さんに声を掛けることが出来ず…私は唯佇む。