ハネノネ
父が帰国してから3ヶ月が経とうとしていた。
父の神経はほぼ侵食されており、ほぼ寝たきり状態だった。
しかし体の弱々しさに反し、背中の羽根は大きく成長し、神々しくも見えた。
「父さん」
私が歩み寄ると、父はピクリともせずに声になっていない掠れた音を出した。
「マリ、ナ…」
「ごめんね、薬、まだ当分できそうにないんだ」
父は黙ったままだ。
「父さんを助けたかったんだけど、まだまだ時間が足りないみたい。ごめんね。」
私の心は思ったより冷静だった。
「でも父さんのおかげで、たくさんの事がわかったんだよ。」
「そうかぁ……それは、よかっ…た…」
「私、父さんがくれたこの知識で、いつか世界を救いたいって思うの。」
「…」
「私まだ子供だけど、子供みたいな夢だけど、本気で思ってるんだよ。」
「……マリナ…」
父がゆったりと口を開いた。