ハネノネ
「お前の小さな体じゃ、世界は、重いだろう…」
「…え?」
「お前と、ユウヤが生きてくれてるだけで…じゅうぶんだ…」
私の涙が、父の大きな羽根を濡らした。
“世界を救いたい”など、単なるエゴ
正義感でもなんでもない、私を笑った同級生に見返してやりたいという醜い感情
そんなことを思っている私が世界を救うだなんて、無理だということも本当は知っている。
だけどそれでも、研究を続けたのは
父さんが、ユウヤが、
ここで生きているからだ。
「じゃあ、私とユウヤのために、頑張って薬、作るね」
いつか薬が完成したとき
この世界を少しでも好きになれたら
その時、世界を救うことにするよ。
父は微笑んだまま冷たくなった。