ハネノネ
それから10年近く経った。
昨年からついに、日本にもハネが降り始めた。
子供ではなくなったけれど、当時から研究が進むことはほぼ皆無だった。
日光によって毒の威力が低下するだとか
血液や唾液などで感染するだとか
ささやかな発見ばかりだった。
私が求めているのは、もっと明るい未来を差す、希望の光の一筋なのだ。
自宅の部屋でひとり頭を抱えていると、突然ドアのノックの音が響いた。
開いたドアから顔を覗かせたのは、弟のユウヤだ。
「珍しいね、どうしたの?」
「あの、さ…」
ユウヤが部屋を入ってきたとき、もう一人の男の存在に気がついた。