ハネノネ
羽根
ヒカルの病はどんどん進行していった。
俺はヒカルの家でずっとヒカルと一緒に過ごした。
ある日、ヒカルは聞いたこともないほど弱々しい声で「外に出たい」と言い出した。
もう神経が切れてしまって動けないから、俺がおぶって外に連れて行った。
ものすごい痛みで少しだけ生えた羽根が、ヒカルの体で圧迫されて痛かったが、我慢した。
まだ少ししか生えていないのに、生えてきたときの激痛は相当なものだった。
当然だ。
すでに発達してる脊髄から、また新しく骨が形成されたんだ。痛くないわけがない。
ならばヒカルは、ここまで羽根が大きくなるまで、
神経が切れるまで
どれほどの痛みに耐えてきたのだろう。
考えるだけで気が遠くなりそうだ。
外は相変わらずハネが降り注いでいる。
あんなに元気だった女性を、ここまで衰弱させるハネ
俺の大事な人を、奪ってしまうハネ
どうか俺の命も、ヒカルと一緒に奪っていってくれないだろうか
願ったって、もう間に合わないのは十分理解しているけれど、せずにはいられなかった。