ハネノネ


考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる。




ハネはナキが出しているもので


ナキは異星人で、




「さっきの男の人に会ったのは、一年ぐらい前。」




コウスケのことだ。


とりあえず今は、理解できる情報だけを聞きたかった。




「道端で、泣き崩れていたの。羽根の生えた女の子を抱きかかえながら。」



コウスケの恋人がハネの病で亡くなった瞬間に、ナキは偶然立ち会っていたのか。



「女の子が死んだ、って言うから、男の人だけでも長生きしてほしくて、その人の脊髄に薬を打ったの。」




ナキは恐ろしいほど淡々と喋り続けた。

こんなに話すナキは初めてだった。



「薬って…?」


「病の進行を遅らせる薬。」




たくさんの人がそれを求めて死んでいった。


それを、ナキが持っていた。



誰もが、喉から手が出るほど欲したのに


ナキはそれを、




“恋人と一緒に死にたい”という願いを持ったコウスケに使った。



< 52 / 90 >

この作品をシェア

pagetop