ハネノネ


ナキの緑の目が、だんだん気味悪さを帯びている気がした。



ナキはきっと善意で、コウスケの命を救おうとしたのだろうけれど、

その行為は、コウスケの精神を壊すほどまでに至った。




コウスケは“死にたくない”と足掻きもがいていたのではない。



“殺してくれ”と、必死で訴えていたんだ。




愛しい人のもとへ行きたくて

でも死ねなくて



コウスケはきっと初めからすべて知っていた。



天使が、自分を生かしているのだと。




だからあんなに怯えていた



独り取り残され、生き地獄を与えた天使を。



「ナキ…」



「それでもわたしを、嫌わないでくれる?」




“嫌いになる”


そんなことはないが、逆に“それでも愛せるか”と聞かれたら、正直頷ける自信はない。



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